まさかのズービン・メータ指揮を生で…!ミューザ川崎にて、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2019年来日公演鑑賞レポート
音楽は好きで、クラシックも好きで、ときどきオーケストラを聞きにコンサートホールへも足を運びますが…そこまで熱烈なクラシックファンと名乗れるほどではないわたし。
だから、世界で名だたるオーケストラなら、ベルリンでもウィーンでもニューヨークでも、どこのだって素晴らしいでしょ!違いがわかるレベルなんかじゃないわ!と思ってました。だから、ベルリンフィルが来日とかという話題も、全然ノーチェック…
だったのですが。
この夏から、サントリー一万人の第九に参加するための合唱練習会に通うようになり、わたしは変わりました。どう変わったかというと、
・ベートーヴェンは素晴らしい!
・第九は素晴らしい!
・オーケストラ聴くならベルリン・フィルは別格!
・ダニーKは面白い!(ほんとに面白いので、YouTubeでググって下さい♪)
…ということを知ったのです。
教えてくれたのは、合唱指導をしてくださった下村郁也先生。日本ベートーヴェン協会の会長を務めるほどの、ベートーヴェン研究と情熱がものすごい方なんです。第九の指導回数は世界一かも?というほどで、そのほとばしる第九愛は見ていて気持ちがいいほど…♪
指導の合い間にお話してくださるあれこれの小ネタが、どれもとても心に響くんです。
その愛が私にもすっかり伝染し(笑)
にわかにベートーヴェンファンになり、
その先生が別格だと称賛するベルリン・フィルはすごいに違いない!と。
そんな経緯で、合唱練習後、帰宅してすぐにベルリンフィルでググってみましたら。なんと!もうすぐ来日公演があるってよ!しかも巨匠ズービン・メータが指揮だよ!
しかも川崎の公演もあるよ!近いよ!!!
それを知ったのが確か、10月の初めごろの話。
公演は11月19日。
チケットなんて完売してるし…
というかチケット代が3万円以上するんですが…破格なんですが…
それでも完売って、すごいね。ベルリン・フィルって、そういうことなんですね。
でも私はあきらめない!どこかにチケット転がってるはず!
ということで転売サイト(チケットストリート)もチェックすると。
ありました… しかもいい席(私にとってね)。
確かに諭吉様が何枚も飛んでいきますが、私の中の価値観では、それはアリ。このタイミングでベルリン・フィルを生で聴けるなら…♪
ということで前置きが長くなりましたが、このような運命的な?経緯で、無事にミューザ川崎のホールに身を置くことができたわけです。体調的には微妙だったのだけれど、行けば絶対パワーもらえる!って信じていたから。頑張って行きました。
さて私の席は、2階の2LAの3の扉から入って、前から4列目。
これは、オーケストラの様子を真横から眺められる良席です。私にとってほら、ライブでの音楽の楽しみは、音の聞こえ具合もさることながら、プレイヤーの表情や動き、様子を「見る」ことでもあるから。
この席だからこそ、チケットを買ったというものです。
19時開演、席はほぼ満席でした。みなさん見るからに本気のクラシックファンの風情です。子どもは一人も見当たらない、そんな大人の空間…
これは確かに、今まで見てきたオーケストラとは様子が違うなと。格調高いなと。
すこし緊張しつつ、団員の登場を待ち…
ステージ両脇から、にこやかに入場してくるオケのメンバーを見ると、えええ?ベルリン・フィルに、こんなにアジア人奏者がいるのね?!というのがまず第一印象。女性だけでアジア系のかたが5人くらいいた感じ。そしてこれは日本人女性ですね、と明らかにわかる雰囲気の方がおひとり、目立つポジションにいらっしゃるぞ…
(→帰宅後ググってみましたら、なんと、主席ビオラ奏者として長年ベルリンフィルで演奏されている清水直子さんでありました!ワォ!)
そんなことを思いながら見ていると、左袖から指揮者登場!
それは、杖をつきながらゆっくりと歩みを進める、おじいさまの姿でありました。
巨匠・ズービンメータさま、御年83歳!それで現役指揮者って、どういうこと?と半信半疑で見ておりましたら…
指揮台に杖をひっかけると、静かにおもむろに指揮棒をとり、振り始めましたよ…。
一曲目は、リヒャルト・シュトラウス作曲の交響詩「ドン・キホーテ」
私には馴染みのない曲ですが、さすがに予習はしました。チェロとビオラの独奏が際立つことで有名なようで、曲調はドラマチックで華やかさもあり、私は好きな感じの曲です。
もう最初は、その圧倒的なオケの存在感、ズービン・メータさまの佇まいに、なぜだか私の方が緊張してしまい…息も出来ない感じで、いっこいっこの音を聴いている感じに。
もうね、とにかく、美しいんだなぁ…。
指揮者によって音楽は変わる、というのは理解しているつもりだけど、正直、どの指揮者がどういう特徴とかは私にはわからない。
でも、今日のこの演奏は、とにかく優しい。柔らかい。円い感じ、なんですよ。感じで書いたら、柔和がしっくり来るかなぁ。
しだいに曲は盛り上がりを見せ、チェロとビオラのかっこいい独奏があり、終盤では風を起こすシーンもあり(パーカッションの方が相当体力を消耗していたと思われ・(笑)。
演じる役者さんはいなくても、音だけで、音楽だけで、こんなにも世界観が表現できるのだなぁ…と。交響詩というものの魅力が少しわかった気がしました。
20分間の休憩中に、ロビーでまい泉のカツサンド(川崎駅のアトレで買っておいたやつ)をつまんで腹ごしらえ。CD販売コーナーでは19800円のブルックナーのCDが売られていたりして、これまた格が違うわ~と感心して見ていたり。コンサートの公式パンフレット2000円というのもあり(しかも見本はなし、お姉さんが手にしている本をぱらぱらして中身を見せてもらう状態。これも新鮮!)。やはりベルリンフィルは違うわ~と、完全におのぼりさん状態で様子を見学していました。
そして後半、ついに!ベートーヴェンです。交響曲第3番「英雄」エロイカですよ。
この曲も、運命や田園、第九に比べたら私の中ではまだなじみの薄いもので。予習しました。そしたら、すごく素敵な曲で!4つの曲から成るシンフォニーだけど、それぞれがドラマチック、そして旋律が美しい… 当たり前ですけど…。
またもゆっくりと杖をついて登場したズービン・メータさま。
私の席からは、その表情が、眼光が、よくよく見えるのです。肉眼でも見える近さだけど、わたしはもっと近くでお顔を見たいから、オペラグラスで見ていました。(そんな人は珍しいです)
そうすると、手の動き自体は小さめなものの、目線がね。目ヂカラがね。やっぱりすごいんです。優しくなり、力強くなり…その変化を、団員たちは受け止めて、演奏に反映しているのかしら。いやはや、83歳ですよ。信じられない。
そういえば指揮者は普通、譜面台つかわないのですか?
確か、今回、譜面台はなかったような…
ってことは、暗譜してるってことですね?
暗譜は、普通なのでしょうか…?
わからないけど、とにかく、これが巨匠なんだと。巨匠のなんたるかを体現しておられる。まろやかさと優しさ、柔らかさの中に宿る厳しい目の光が、それを物語っているように私には感じられました。
私の席からはプレイヤーの皆さんの様子もよく見えるわけですが、これがまた十人十色の演奏スタイルで、本当に面白い。上半身を固定している感じで弾くひと、オーバー気味に身体を揺らすひと、物静かなひと… いろいろなスタイルがありますね!
それでも、奏でる音はひとつ。強弱の付け方もひとつ。統一されているのが本当にすごい。
わたしは今回合唱の練習に参加してみて、音楽をやることはスポーツにも似ていて、その一瞬のパフォーマンスを求められているのだと。いま一番の音を出す!っていう瞬間に、しっかり出さないと!そしてそれには相当な覚悟と準備が必要だと…。知ったんですね。
ものすごいことなんですよね、それって。
団員が一致団結して、自分を出しながらも、一つになること。一つの音をつくること。
あぁもう、そこに至る過程を想像するだけで感動だし、当日きっちり仕上げていることにも感動です。
普通に聴いてて、
これだけ多くの人がいながら、バイオリンならバイオリン、チェロならチェロのパートの音が、いっこだけにしか聞こえないって、本当にすごいなと。音符の縦が揃ってる、出だしが揃っていることの気持ちよさと言ったら!
その統一感、一体感の半端なさが、ベルリン・フィルは別格なんだろうな…。
いろんなことを見て、聞いて、もう感動でいっぱいいっぱいになりながら迎えた英雄の第4楽章。これがもうなんというか、勇気あふれる勇ましさとか、華やかさとかがいっぱい詰まった素敵すぎる旋律で…。思わず涙ぐんでしまいましたよ。もうこのままフィナーレが訪れないでいて欲しい、ずっとこの音を聞いていたい、と思いながら…。
拍手を打つ手のひらが痛くなるほど、何度も何度も拍手して。
立ち上がりたくなったけど(スタンディングオベーションね)、周りの誰一人として立ち上がっていなかったから、さすがに控えた…
でも、一人でも立ち上がればよかったなと。いまは思う。私の感動をそれで表現できるなら!
アンコールはさすがになかったけど、もうね、英雄の第四楽章が素晴らしすぎたから、これ以上はいらないって感じでした。本当に。
つれづれなるままに、初めてのベルリン・フィル体験を綴りましたが、いや本当に…行けてよかった。衝動的にチケットを取り、会場に足を運ぶという行動を実現させたわたし、本当にグッジョブ!
世界最高峰の音楽に出会えたことは本当にわたしの喜びです。
いろんな音楽の経験が繋がって、ここまで来たと言う感じで。わたしは感無量なのであります。
わたしをここまで導いてくれたさまざまなことに、心から感謝ーーー。