ブラジル人学校で日本を紹介する非日系ブラジル少年たち
日系の学校における、日本にまつわる祭りというのは珍しいものではないけれど、
ここサルバドールのように極端に日系人が少ない街の、
日系人が一人も通っていないブラジルの私立学校で、
非日系のブラジル人生徒たちが日本をテーマにアプレゼンタサォン(発表)するというのはかなり興味深いことだと思う。
おなじマンションの最上階に住む、コイの友達ヴィットルたちが今日、学校祭で日本に関する発表をするというのだ。
その準備のため、我が家に何度もやって来ては、折り紙を教えてくれだの、日本の食べ物を食べてみたいだの、生きた我が家の日本文化をあれこれと学んでいった。
折り紙と言えば鶴でしょう、ということで折り方を教えたら、コイは覚えも悪いし折り方も下手だし…でとてもじゃないが飾りものにはならないレベルなんだけど、さすが11歳のヴィットル。すぐにマスターして、教えた翌日には普通紙を小さく切って折り紙にして、数十羽の鶴を自分で作って見せに来た。
こういう子に教えるのは楽しいねぇ。
そして昨夜。またまた我が家にやって来た。夜の7時近くに…。
今度は何だい?発表は明日だったよね???まだ何か足りないのかい???と聞くと、
「部屋にディスプレイするものが足りないから、日本のもの何でもいいから貸して欲しい!」と来た。
日本のもの何でもったってアナタ…
部屋にディスプレイできそうな日本的な飾り物なんてほとんど皆無だよっ!
いや、今思えば、こいのぼりとか小さいお雛様うさぎの置物とか、確か納戸にあったけど…その時はあまりに急で思い浮かばず。
日本語の絵本とかコイの国語の教科書とか、ナルトのまんが本などを貸してあげることにした。その数があまりに大量で驚いたんだけど…そそそれはちょっと足りないというレベルじゃないのでは…???
でも彼らは本気なので、まぁしょうがない。
なくなったらイヤだなぁ、日本語のナルトは貴重なんだから絶対返してもらわないと〜
「絶対、教室の外に持ち出したらダメよ!友達が持ち帰らないように注意してよ!」とくぎをさしてみた。
そして今日が発表当日。
私も見せてもらうことにして、朝、ヴィットルのお父さんと一緒に車に乗せてもらって学校へ。
その車ってのがもうびっくりよ、昨日来たばかりだと言う小さいベンツっ!!!新品の香りがプンプンしてるよ…
(ちなみにブラジルでベンツはかなり珍しく、かなり高級車です。言うまでもなく。)
行ってみると、学校祭というほど華やかなものでもなく、各教室がいろんなテーマで彩られ、テーマごとの発表が20分ずつ、午前中の間に5〜6回行われると言うものであった。
たとえば、シルク・ド・ソレイユがテーマだったり。
インドがテーマだったり。
ハワイアナス(ブラジル製サンダル)の歴史がテーマだったり。
警察やサッカー、ハリウッドがテーマなんていうクラスもあった。
さて、我が日本テーマはと言うと。
うわ… 我が家の本がずらりとメインでディスプレイされているよ…
念のために渡した日経新聞も、堂々と壁に貼られているし。先月分を破り取ったポニョのカレンダーも貼ってある。
そしてちゃぶだいには日本風のテーブルセッティングと、スーパーで売っているお寿司パックが。
発表者のヴィットルほか3人の男児は、柔道着を身につけている。
さらには、男児のおばあちゃんだという女性が、なぜかチャイナドレス姿で立っている… 出たよ、日本と中国の混同!!!
そして来たよ質問が…
「このキモノはどういう状況の時に着るのかしら?パーティとか?」と笑顔で聞かれたらもう…強く否定するわけにもいかず。
しかしここは毅然と違いを述べるべし。
「いや実はこれは日本じゃなくて中国の服で…たたたぶんパーティなどで着ると思われ…」と全然毅然とじゃなく返答(苦笑)。そしたら鳩が豆鉄砲くらったような顔で「え、日本じゃないの?(あなたのほうがおかしいんと違う???)」と…
ブラジルにおける、日本と中国混同問題はなかなか難しいのでありますー。特にバイーアではねぇ。
ま、もう、同じアジアンだからどっちでもいいんですけどねぇ。
そして発表はと言うと。
一応、寸劇風にストーリー展開させつつ、マンガ、アニメ、日本の文字、日本の食事、キモノなどを一通り紹介していた。ちゃんとポル語の文献を読んで、彼らなりに日本について覚えたようで、なかなか感心感心。
たとえば日本の食事については「イチジューイッサイ」なんて言葉まで使ってた。食事のときにはスープを必ず飲むのだ、と当たらずとも遠からずの説明をしていて大変けなげで良かった。
キモノについては、オビの説明を重点的にしていた。
それにしても、よく調べた(というか覚えた)と思うよ、日本のことを。興味があるんだろうね、実際。
観客席もなかなかの大盛況。
顔をペイントしている子は、自分の出し物の合間をぬっての見学であります。(さてはシルク・ド・ソレイユ担当だね)
最後には日本クイズを観客に対して行い、回答した人には折り紙の鶴をプレゼントしていた。なかなかいい演出だ、うん。
私もちょっとだけサービスしちゃった。
ブラジル人が必ず喜ぶ、名前を漢字で書くサービス。ヴィットルとかルーカスとかアナマリアとか、適当な当て字の漢字で書いてあげるだけのことなんだけどね。
これはどんなブラジル人も喜ぶからね。
やっぱり今日も次々に列を作って並んでは、やれ妹の名前も頼む、父さんと母さんの分もよろしく…と大人気コーナーになってしまった。
ラリルレロに当たる漢字は難しいよねぇ、ロペスを呂比須とは良く書いたもんだよ。サントスを三都主とかさ。
そんなこんなで、いちいち漢字のもつ意味を説明しつつ、このサービスを続けていると実は結構疲れる(笑)
でも私も楽しいから続ける。
これ、先日のベレンの日本祭りでは、1回2レアルでやってたなぁ。私、今日、軽く40人分はやったよなぁ…80レアルかぁ〜と思わず皮算用。
昨日の夜、割と切羽詰まった顔でうちに本を借りに来た割には、今日はもう堂々と、実に堂々と発表していて。さすがブラジル人!帳尻合わせが上手だぜ!と改めて思わされました。
聞けば、食卓に乗っていた食器(お椀とかおちょことか箸とか)、さらには芽ひじきやそうめんや海苔などは、昨日の夜にチャイナ服おばあちゃんが近所の日系人のおうちに行って借りてきたんだとさ。
そしてボンサイが一つ飾られていたのだが、それも昨夜、スーパーで買ったんだそうな…
って、全部前の晩の仕込みかいっ!!!
用意周到日本人的視点から見ると、なんて恐ろしい準備風景よ…
それでも当日はちゃんとやっちゃうんだからブラジル人は。それはそれで、すごい能力だよねぇ。
え… 関係者ってこれだけっすか…???
結局、この発表に関わってるのは、生徒3人と、うち一人の母親と祖母2名(父方、母方:いずれも非日系)のみ。
うーーーん。よくわからん発表。どういうメンツなんだ???
そんな中において、私は結構重要な役割を果たしたと言うことで。関係者の皆さまからは「あなたなしではこのイベントはなりたたなかったわ〜」とほめちぎられた。
え、ええ、そそそうですね。ほんとに、私がいなければ(というか、我が家が貸しだした本がなければ)、このブースが日本だとは思えなかったかも知れませんね…
とは言いませんでしたけど(笑
でも、誰かのお役にたてるなんて機会、私にはほとんどないもんだから。そう言われるのは嬉しいです、ほんと。
今回の来場者の中に、「折り紙教室はないのかしら?私、ぜひこの鶴を折れるようになりたい!」と切望されるマダムがいましてね。そう言われたらやるしかないでしょう。私の連絡先を告げました。
さぁ、彼女の本気は本物か?果たして連絡は来るのか?
今後の楽しみも生まれて、今日のイベントはとても良かったわ。家に帰ってきたら、なんかどっと疲れが出たけどね…。