今度は「ん」の発音に苦戦…
先日ここでちらっと書いた、「つ」の発音に苦戦しているブラジル人女性、エリさん(仮名)。
皆さんからいろいろアイデアをいただいて、よし次のレッスンではもっと具体的に「つ」の音を教えるぞ!と張り切っていたんだけど…
その後、レッスンに姿を見せず(涙)
どうしちゃったのかなぁ。私があまりにも「つ」とか「つき」とか「くつ」ばかり言わせるから、日本語、嫌いになっちゃったのかなぁ。
そんなことで嫌いになってもらっては困るのだけれども…
教える側としては、生徒が来なくなっちゃうと、ちょっとガッカリ、淋しいよねぇ。
仕事が忙しいだけだったらいいんだけど。
さて、このエリさんとは別の生徒さんで、17歳のクレ君という青年がいる。とても大柄なので、年齢的には少年かも知れないけど、見た目はかなり青年、である。
彼はこれまでにも別の日本語講座で勉強していて、ひらがなは9割方覚えている。漢字も積極的に覚えようとしている。
なんでも、タタラボー(ひいひいおじいさん?)が日系だとかで、一応、彼も日系人ということらしい。
私には全然日系に見えないんだけれども… なんでも、お母さんはインディオだとか。
とにかく、まぁ、いろいろな民族の血を引いている、ブラジル人らしい青年なのである。
彼の場合、やはり、日本語の発音にかなり難がある。
読み書きは結構頑張っているだけに、発音の悪さは、かなり、惜しい。
発音が悪いってね、並みの悪さじゃないんだよね…。正直、彼が何を言っているのかわからないのよ。
ええ、それって、日本語だったの?
…みたいな。
そのくらい、ひどいの。
もっとも、そもそも単語を間違って覚えこんでしまっていることも多いので、「え、そのような単語は日本語には存在しませんよ」ということもしばしば…
ほぼ独学で語学をやっていると、こういうことが起こるから危険なのよね。
自分ではそれが正しいものだと思い込んでいる、でもネイティブに言わせると全然違う…みたいなことが。
このような生徒さんなので、もろもろ、矯正のしがいがあるってもんです。はい。
ここは私の力で、なんとか改善させたい!と思うものです。
で、毎回、頑張っているんだけれども…
彼がどうしても出せない音、それは「ん」なのです。
「ん」は、非常によく使う字ですよね。
いち・に・さん・よん。ほら、もう、さん・よんで登場している。
5時はん、2時15ふん。時間を言うときも、半とか分とか、「ん」で終わる言葉を使う。
5時半に、三人の弁護士が、新幹線に乗って、新宿新都心へ行きました。
5じはんに、さんにんのべんごしが、しんかんせんにのって、しんじゅくしんとしんへいきました。
たとえばこの文を読む場合、「ん」が言えないと、もうなんだか全然わからない文になるの。
5じはに、さにのべごしが、しかせにのって、しじゅくしとしへいきました。
…ね? これ日本語?って感じになっちゃうでしょ?
たとえて言うなら、そうね、ものすごーく鼻が詰まっている時に話をしているような状態…。
とにもかくにも、「ん」は大事。これは絶対マスターしてもらわねば!
今回は、舌の位置を具体的に説明した。舌の付け根というか、下の奥のほうで、のどに蓋をするんだよ、って説明した。
この説明も微妙だけど…
そして、やっぱりまだよくわからないらしく、相変わらず「ん」が「ん」にならないんだけど…。
とにかく訓練してもらうしかないんだよねぇー。
ちなみに、ポルトガル語に「ん」の音はないのか、というと…
あるある。たくさんあるよー。
quinta-feira:キンタフェイラ。importante:インポルタンチ。São Paulo;サンパウロ。arroz com feijão;アホイス・コン・フェイジョン。
ね、カタカナで書くと、「ン」がいっぱい。
でも、これらの音は、そういえば日本語の「ん」ほど重くない。もっと軽いのよ。鼻に抜ける「ん」ってやつ。
日本語の「ん」のように、のどの入り口の蓋をしっかりしめないのよね。
むむむ…。
それにしても、こういうことって、私たち日本人は、誰に習うでもなく、なんとなく覚えてきているのよね。
その証拠に、うちの5歳児に言わせてみたら、ちゃんと「ん」が言えていた。
だからこそ、自然に体で覚えたことだからこそ、誰かに理論的に教えるのが難しいんだな。
相手が感覚的に覚えてくれる子供とか、そういうセンスを持ち合わせた大人だったら、理論も何もなくただ真似させればいいけれど、そうでない(多くの)大人の場合、難しいなぁと思う。
日本語教師になるための勉強、資格というのは、だからこそ必要なんだなぁ…と実感させられる今日このごろです。はい。