燃えるビーチ
燃えるビーチ、ですが。
若者たちが激しくサンバを踊り狂い、熱狂で熱く燃えているビーチ、ってわけではないの。
その方が100倍いいんだけどね。
実際に「燃えて」いたのだ。
私がとても気に入っている、地球の歩き方にも書かなかったビーチに、かなり久々に足を運んだ。
日本から、友人の友人が一人旅でサルヴァドールまで来てくれたので、案内がてら。
ボンフィン教会にまず行って、ゆっくり教会の中を見学し。
この日はちょうどミサをやっていたのもあり、とても心が落ち着くひと時を過ごせた。
青空もとてもまぶしくて、雨続きの中にあって、すっごくビーチ日よりだったのよ。
私のゴールデンコースは、そこから少しセントロ方面に戻ったところにあるビーチで軽く一杯やること。
この日も、張り切ってそこに向かった。
そしたら、なんか、臭い…
焦げ臭い。
もくもくと煙も上がっている。
なんと、こよなく愛していた海辺のbarraca(バハッカ、軽食や飲み物を提供する海の家)が、ひとつ残らず取り壊され、火を付けて燃やされていたのだ。
サルヴァドールでは、6月ごろ(私が一時帰国する前)から、海辺のバハッカを崩していた。
なんでも、衛生基準に満たないような、不衛生な調理場が指摘されたり。そういうことらしい。
すでにその頃、我が家からほど近いエリアのバハッカは、何件も壊されていた。ジョギング中に、その様子を目撃して、軽くショックを受けたものだった。
その頃からの流れで、今、ボンフィン近くの海にまでバハッカ崩壊が広がって来たのか…
と思っていたら、ボンフィンとは反対側、つまりセントロからずっと空港側に位置するピアタンやイタプアンのバハッカも、同じ頃、次々に崩され、燃やされていたのだった。
大義名分では、
サルヴァドール・新ビーチ計画とか言って、
新たな海辺の開発を進める、と言っている。らしい。
でも実のところ、
バハッカで働く人たち、その家族への生活保障などはないらしい。
みんな、燃える木片のわきで、じっとそれを見つめていた。
涙している人もいた。
そりゃそうだ。
海辺のバハッカでビールを飲みながら、友人たちとおしゃべりして過ごす。それが、サルヴァドールっ子のお気に入りの休日の過ごし方。
ある意味、街の文化とも言えるものなのに。
サルヴァドールの風物詩なのに。
私たち家族も、休みの日にふらっと海辺にやってきて、SKOLの黄色やBRHAMAの赤のプラスチックチェアとテーブルを陣取り、冷たいビールを飲みつつエビをつまみつつ、子どもたちが水遊びするのを眺めるのが大好きだった。
こんなに気軽に来れる海って、サルヴァドールの他にないよね、って。
自慢のバハッカだったのになぁ。
なぜ今、一気に壊しているのか。
まさに、まもなく行われる大統領選挙、州知事選挙、もろもろの関連選挙のために他ならない。
いわゆる選挙対策ってやつですな。
だって、6月から順序良く壊していけば、今の今までかからないでしょう。私がいなかった7月には、作業はストップしていたってことかい?
どこぞの政党の公約なんでしょう、きっと。
私には選挙権がないから、公約も何も興味がないし、そもそも公約を声高に演説して歩く候補者など皆無に等しいから、よくわからないのだけれども。
(写真は、ビーチの向かいの壁に書かれていた、立候補者のPRペイント。いま、町中がこんな感じ)
このブログでも紹介した、Praia do Flamengoの有名大型バハッカ「Marguerita」もなくなった。
その近くにあった、日系人ご夫婦が経営すると言う「baiones」というバハッカもなくなった。
新聞に、ご夫婦のインタビューが掲載されていた。
「こんなことをしてしまうバイーアが、サルバドールが情けないです」と語っていた。
まさに同感です。
ビーチ文化はサルヴァドールになくてはならないものなのに、ビール1本も提供されないような海じゃ、誰が集うと言うんですか。
お弁当持参ですか。ビールが入った発泡スチロールをかついで持参ですか。
それでもいいかも知れないけど、ねぇ。
どれだけの売り子さんたちが職を失ったと思うよ。
そんなわけで、久々のビーチは、変わらず海はエメラルドに輝き美しかったけど、人影はまばらで。淋しかった。
観光に与えるダメージも大きいと思うな。
あんな人影まばらなビーチじゃ、強盗が怖くてのんびり出来ないよ。
本当に、新・ビーチ計画は実現されるのですか。それはいつですか。
海辺の休日を楽しみにしていた私たち市民は、これからどこに向かえばいいのですか…
その足で今度はペロウリーニョに向かったら、ラセルダ・エレベータ前の広場に警官の群れが…
どうやら、バハッカ焼き討ちに抗議するデモだったみたいです。
翌日の新聞の一面は、どれもバハッカの話題でした。
庶民の楽しみを、そして多くの人の雇用を奪った今回の件。
ビール好きの私としても、許せない〜〜〜。