目の前で、逮捕劇。
数日前のこと。
いや、あれは確か金曜日だったから、かれこれもう1週間が経つのか…。
夕方の6時少し前に、いつものように犬の散歩に出かけた。いつもはもう少し遅くなってから出るかな。
夕食の仕込みが終わって、ダンナが帰ってくるのを待つ間くらいの時間帯に。
だからこの日は少しいつもより早くて、いつもより明るかったのだけれど。
家の周りを一回りして、家からワンブロックの交差点のところで、時々散歩中に遭遇する同じく犬連れのご婦人とバッタリ会った。
すごく感じのいいご婦人で、会うたびになんだかんだと世間話をするのだけれど。
この日のネタは、ちょっと物騒だった。
「あのね、最近この辺、物騒だから気を付けたほうがいいわよ。先週の日曜日の朝9時ごろね、教会に行こうとしてこの通りを歩いてたら、二人乗りのバイクが近づいて来て私を脅そうとしたのよ。幸い、何も盗られなかったけど…ああ、怖かった。それからもうバイクが怖くて、私。」
と、とうとうと強盗体験談を語り始めた。
え〜、日曜の午前9時って!
そんなのどかな時間帯にそんなことが!
しかも、この通りって!うちのマンションが建っている通りじゃないの!!!
怖いですねぇー、なんて相づちを打っていたら、今度はそこをたまたまペットショップの女主人が車で通りかかった。
車の窓を全開にしているので、彼女もすぐ私に気付いて。いや、私にというより、愛犬コリンの姿に気付いたんだな。
私たちが旅行に行く時、コリンを預けているのが彼女のマンション。ということで、コリンと彼女の間には深い絆?があるのだ…
で、女主人、わざわざ私たちの近くに車を止めて、車から降りてコリンを抱き上げて、世間話に加わった。
彼女もまた、物騒な話をし始めた。
「なんか周りでパトカーの音が騒々しいもんだから、怖くなって、今日はもう店を閉めて帰ることにしたのよ。」
ですって。
そういえばパトカーの音が…
なんか、すぐそばに聞こえますね…???
と思ったら、私たちが立ち話をしているそのわきをパトカーが2台通り抜け、
すぐ目の前の、私たちと反対側の角で、逮捕劇を繰り広げ始めた。
パトカーから素早く下りて、ピストルを構える警官二人。
道の反対側から、走って駆けつけた、これまたピストルを構える警官二人。
総勢4人で、やせた浅黒い肌の二人の少年を取り囲み、捕まえた。
捕まったのは、どう見ても若干12歳ほどの少年…。
まだ子供じゃん…。
少年たちはすぐにパトカーに乗せられ、パトカーは去って行った。
でも、警官はその場に残り、相変わらずうろうろしている。どうやら、まだ犯人は複数この辺にいるようだ。
おお、こわ!!!!!
まさかこんな話をしている最中に、目の前でこんな騒動が起こるとは…。びっくりよ。
っていうか、実際、怖いよ!!!
少年逮捕の一部始終を見届けてから、私たちはそれぞれの家に帰った。ほらごらんなさい、怖いからもう退散しましょう、などと言いながら…。
その現場から徒歩1分の我がマンションに帰ったら、門番が通りに出て、向こうの方を眺めている。先ほどの逮捕劇とは反対の方。
思わず、今見て来たことを門番に話す。そしたら、
「ほら、まだ逮捕劇は続いているよ。あっちに警官が張り込んでいる。まだ犯人がいるんだよ。」と落ち着いた声で言う。
「犯人は残らずつかまえてもらわないとねぇ」とも言っている。
ひぇぇ。
この通りで強盗でも起こったの?と聞くと、
「いや、海から1本入った大通りで強盗があって、犯人はこっち方面に走って逃げて来たらしいよ。」ですと。
その大通りには銀行の支店がいくつも並んでいて、商店も多い。大きなバス停もあって、人の動きが激しい通りだ。常日頃から強盗が多い通りだとは聞いていたけれど、まさか、今こんなに自分に近いところでこんな風に…
一気に怖さアップ!
慌てて部屋に戻る。
すると子どもたちが、下のプールで今から遊ぶんだと言って張り切っている。
下のプール!
ダメダメ!
今、通りにはピストルを持った警官がたくさんいるんだから!
もしプールにピストルの弾が飛んできたらどうするの!!!!!
と、事情を説明した。
ピストルの言葉に恐れをなしたようで、いつもは私の忠告など振り切って遊びに行くコイも、いつにない真剣な顔で、家じゅうの窓をしめ、カーテンまで閉めだした。
そ、そこまでしなくても…。
ま、そのくらいの用心は大事か…。
それから少しして、どうやら警察たちは去って行ったようで、もとの静けさが戻ったけれど。
いろんな意味で、ショックな出来事だったな。
まず、つかまったのがほんの少年だったこと。たぶん、強盗グループの下っ端の下っ端なんだろうけど、あんなに若い子どもが…
そして、現場がまさに我が家の目の前であったこと。
強盗の多い大通りからは4本ほど入ったところにある、普段は静かな住宅街なんだけどね…
確かに、強盗が走って逃げてくるには都合がいい地域と言えば、そうも言える。
まぁ、ここはブラジルですから。
どこにいても、誰といても、何をしていても、何かある時は、ある。
たとえ、ガードマンが複数いるような、二重ゲートの超安全と言われる住宅に住んでいたとしても、何かある時はある。
通りを歩いている時に、何かある場合もある。
だから。
この付近で危ないことがあったからと言って、すぐ「引っ越さなきゃ!」という話にもならない、と思う。
どこにいても、何かある時はあるものだからねぇ…。
でもやっぱり、ピストルを構えた警官を何人も見るのは、気持ちのいいもんじゃないねぇ…。
ふぅ…。