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芸人系サンバ歌手??ジャイール・ホドリゲスのライブ


どなたかが書いていた。ジャイール・ホドリゲスは芸人系サンバ歌手、いや、サンバ系芸人歌手であると…
どっちだっけ?
いや、いずれにせよ、芸人歌手っていうのはアリなのか?
サンバを歌う芸人って…
かなり興味深くないですか???



その彼が、70歳記念・芸能活動50周年記念コンサートを、ここサルバドールで一夜限りのショウとして開催すると言うから行かないわけにはいきません。
そして彼は、私が大好きな若手ソウル系ブラジル人シンガー、Luciana Mello(ルシアーナ・メロ)ちゃんのお父様でもあります。
この点においても見逃せません。もしかしたら、娘・息子(やはり歌手のジャイールオリヴェイラ)もゲスト出演するかも知れないしね♪



さて今回の会場は、私にとっても初訪問となる「Casa do Comercio(カーザ・ド・コメルシオ)」内のTeatro SENACでした。ここ、外観が非常に独特で。私たちの中では「ポンピドゥーセンター」と勝手に呼んでいた(笑)。
ガラス張りで赤い縁取りがされてて、形もちょっと不思議なの…。
まさかこの中に劇場があるとは思わなかったわ。

今回の客層は、前回のマリア・ヒッタどころじゃない、ご高齢なファンの皆様ばかり…。そりゃそうよね、ジャイールご本人が70歳。ブラジル歌謡界の重鎮であられますから。
長きにわたっての熟年ファンの皆様が、しゃなりしゃなりと会場入りされております。
私たちは開演15分前に入ったんだけど、なぜか最前列の右サイド通路側が2席空いていてラッキー♪最前列ですよ最前列!
スピーカが近すぎて音響的にどうかなぁ…と思いつつ、いや今回は彼の芸人ぶりを目で楽しむことにも意義があるから…とよくわからない理由でそこに座ることに。


開演予定の午後8時からわずか10分遅れでジャイール登場!!!
10分遅れですよ!ビバ!!!
ブラジル人といっても、一様に時間にルーズなわけじゃないのよ。ということを重鎮みずからがご証明。素晴らしい。
もちろん会場のテンションもいきなり上がるってもんで。


70歳ということだけど、そんなお年には見えない。
きっちりと赤いネクタイに青いスーツ姿で。朗々と歌い上げるその声も、全然70歳とは思えませぬ。すごい。
いつもショウに行く前には、そのアーティストのCDを必ず聞いて予習して行くんだけど、今回はショウの開催を知ったのが数日前だったこともあって、ほとんどお初の曲ばかり。
だけど、サンバなんですよ。サンバの曲は、何を聞いたって楽しいし。彼のパフォーマンスは噂にたがわぬ芸人ぶりで!


何が芸人っぽいって。その動きとしぐさと表情と。
歌の途中に入るトークがまたおかしい。微妙にエロ系なネタを放ってみたり。なんか、歌を歌ってないと、単なるよっぱらいおじさん???って感じでさ。
とにかく笑いが絶えません。彼の動き、目が離せません。
あぁ動画でお伝えできないのが残念…。


しかし歌はホンモノです。なんと、イタリアのオペラ歌手(若き盲目の天才テノール歌手として知られ、日本でも有名な:ダンナ談)、アンドレア・ボッチェリの曲まで披露する歌唱力ですよ。
そしてサンバはとっても力強く心地いい。サンバステップももちろんばっちり。
額に汗しつつも、スーツの上着は脱がず歌い続けるその姿… っていうか暑苦しいから脱いだ方がよろしいのでは?!と思わず言いたくなるほどの汗。(もちろん、歌うたび語るたび汗がぶっ飛び。からまれたギタリストは一体何滴の汗を浴びたことであろうか)


一瞬、幕間があり、その間、ギタリストの一人であるパウリーニョ氏がソロ演奏を聞かせたんだけど、これがまた聞いたことないくらい素晴らしいプレイで。ヤマンドゥ・コスタかと思ったよ(って、聞いたことないんだけどさ、ブラジルの有名技巧派ギタリスト)。
だって彼のギターは、ビリンバウ(カポエイラの楽器)やクイッカ(ゴン太くんの声)の音まで出してしまうんだから!


そして幕間開けで再登場したジャイール氏は、さすがにお着替えをしていた。今度は赤い半そでシャツ。涼しげでよろしい。
後半もノリノリで、エリス・レジーナにささげる歌、ジョルジ・アラガォンにささげる歌などを次々に歌い上げ、
ロマンチコ系のバラードになると会場は大合唱で…
ブラジルのショウにおけるこの大合唱は本当に感動的。みんなが本気で歌うから、会場の歌声が本当に大きい。
日本ではちょっと見られない光景だと思います。日本でここまで全員本気の合唱を私は聞いたことがないなぁ〜。
しかも今回はご高齢のファンが多いのに、もうみんなノリノリで、若いころからきっと変わらない彼のパフォーマンスに大喜びですよ。

私たちは最前列にいたこともあり、会場内(たぶん)唯一の日本人であったことから、トークの中で何度か「ジャポネーザ」と言われ(からかわれ?)、会場の皆さんの笑いを誘いました。
そしてなんと、「上を向いて歩こう」をアカペラで歌ってくれたんですよ、いきなり。「僕は日本の歌も知ってますよ」なんて言い出してね。
こういうファンサービスが彼の魅力の一つなんでしょう。
客席まで下りて、最前列だけじゃなく後ろの方までまんべんなく歩いて歌うサービスもあり、とことんすごい。


さらにさらに。
頭を床につけて逆立ち…なんて芸当も出来てしまう70歳って… ものすごいパワーを感じます。



ショウは2時間弱で終わったけれど、ものすごい充実感。っていうか、濃くて微妙に疲れた(笑)。
でも、これぞブラジルの魂、というような勢いと伝統を感じさせられました。いいねぇ、ホマンチコ♪


あ、ホマンチコとは、Romanticoと書くのです。ロマンティックなこと。響きがポル語になるとちょっと気が抜けた感じになるけど…
熟年層に支持される音楽ジャンルです。ブラジル人のおばさまたちはホマンチコ好き。歌詞が愛だの恋だの星だの海だの、ちょっと日本の哀愁系演歌に近いものがあるかも。
彼の歌うサンバもいいけど、ぐわーーっと歌い上げるホマンチコはまさに演歌。心にしみます。(私も立派なおばさまね♪)


終演後もまだお楽しみが。
なんとロビーにジャイール本人が出てきて、会場で販売しているCDとDVDにサインをしているではありませんか!
喜んで私たちも列(というか列にもなってない、群がるファンたち)にまぎれてみた。
やっと番が来て、話しかけてみた。「あの、奥様は日系だとお聞きしましたが〜」と。
するとその答え。
「妻は2世、義母は1世、娘は3世、私はノン・セイ!」と… お決まりのギャグ…(ってポル語わからないと笑えませんが、一応解説すると、ノン・セイはnão sei、知らな〜いの意味)。
さすが芸人系…。

とにかく、やっぱり、今日のステージを見られて良かった。
実はこの日、ペロウリーニョではPaula Lima(パウラ・リマ…今年日本でもライブをした若手女性シンガー、低い声が渋くてかっこいいの)のショウもあったんだけど…よりによって同時刻開催…
かなり迷ったんだけど、ジャイールを見て良かったよ。納得の芸人ステージ、最高でした。
機会があればぜひDVDでもご覧いただきたい。これぞブラジル人のおじさん!って感じのふるまいっぷり&素晴らしい歌声、一粒で2度も3度も美味しいアーティストはそうそういませんぜ〜